Case Study

「情報を並べる」から「体験を設計する」へ — ファンサイトの情報設計

過去の記事やファンアートへ、新しい入口を作る。「知る・見る・辿る・遊ぶ」から考えたファンサイトの情報設計。

記録や書籍が並ぶ夜の編集室を描いたNIのイメージビジュアル

ファンサイトを作るとしたら、何を置くだろう。

プロフィール。活動履歴。リンク集。写真やイラスト。

必要な情報を整理して並べれば、サイトとしては成立する。

でも今回作りたかったのは、情報を探すためだけのページではなかった。

サイトを歩いているうちに少しずつ人物像が見えてきて、気になるものを辿っていたら、いつの間にか前より詳しくなっている。

そんな「知っていく体験」そのものをWeb上に作れないかと考えた。

そこで制作したのが、しらすさんの非公式ファンサイトだった。

過去の記事へ辿り着きやすい入口を作りたかった

制作のきっかけの一つは、しらすさんがこれまで公開してきた記事だった。

過去の記事を含め、読み物として面白いものが多い。

一方で、noteやSubstackのように記事が時系列で積み重なっていく媒体では、初めて見る人ほど「どこから読めばいいのか」が分かりにくくなる。

古い記事だから価値が低いわけではない。

むしろ人物を知るうえでは、過去の記事に面白いエピソードが眠っていることも多い。

そこで、公開された順番とは別の軸から過去のコンテンツへ辿れる入口を作りたいと考えた。

もう一つの理由は、自分で作ってきたファンアートをまとめて掲載できる場所が欲しかったこと。

この二つが、サイト制作の出発点になった。

情報量を増やすだけでは、人物像は伝わらない

人物について詳しく紹介しようとすると、情報は自然と増えていく。

プロフィール。好きなもの。特徴。過去の出来事。発言。作品。ファンアート。

それらを一枚のプロフィールページにまとめることもできる。

ただ、それでは情報量が増えるほど「読む資料」に近づいてしまう。

今回扱いたかったのはデータそのものではなく、その人を知っていく体験だった。

そこで最初に、「何を掲載するか」だけではなく、「どんな角度から知れると面白いか」という単位でサイトを分解した。

「知る・見る・辿る・遊ぶ」に分ける

中心となるコンテンツには、それぞれ異なる役割を持たせた。

  • 大解剖図鑑:特徴やエピソードから人物像を知る
  • ギャラリー:ファンアートや表現から見る
  • 年表:これまでの出来事を辿る
  • しらす占い:関連コンテンツを通して遊ぶ

同じ人物を扱っていても、入口が違う。

文章を読みたい人もいれば、絵を見たい人もいる。活動の歴史から知りたい人もいれば、軽いコンテンツから入る人もいる。

ユーザーに正しい順番を要求するのではなく、自分の興味がある場所から入れる構造にした。

トップページですべてを完結させない

初期段階では、トップページの中である程度コンテンツを完結させる構成も考えていた。

ただ、整理を進めるほど載せたい情報が増えていった。

図鑑。ギャラリー。年表。関連企画。本人の記事への導線。

すべてをトップページに載せようとすると、一つひとつのコンテンツを十分に見せにくくなり、ページ全体の役割も曖昧になる。

そこで途中から、トップページを「全体を見渡す入口」として割り切り、詳細はそれぞれ独立したページへ持たせる構造に変更した。

トップですべて説明するのではなく、「何があるのか」を見せ、興味を持ったものを深く見てもらう。

結果として、その方が情報量の多いサイト全体を整理しやすくなった。

最初に決めた構造を守ることよりも、実際に載せたい情報を並べたときに自然な形へ変えることを優先した。

プロフィールではなく「大解剖図鑑」にする

人物紹介の中心に置いたのは、一般的なプロフィールページではなく「しらす大解剖図鑑」だった。

外見、衣装、仕草、口癖、持ち物、好きなもの。

人物の特徴を細かく分解し、観察するように辿れる構造にしている。

ここで重要なのは、網羅性そのものではない。

一つの特徴を見つけて、「これはどこから来た情報なんだろう」「この話をもう少し読みたい」と思ったときに、本人の発信や元になったエピソードへ戻れること。

ファンサイトの中だけですべてを完結させず、本人のコンテンツをもっと見に行く理由を作る。

過去記事への入口を作りたかったという、最初の制作動機ともここで繋がっている。

ギャラリーは「作品置き場」にしない

ギャラリーも、画像を保存して並べるだけの場所にはしなかった。

ファンアートを一つのコンテンツとして見せながら、ほかのページと同じようにサイトを回遊する入口の一つとして扱っている。

図鑑が本人について知る場所なら、ギャラリーはファンの視点を通して見る場所になる。

自分が制作してきたファンアートをまとめる場所として始まったものを、サイト全体の体験の中に組み込んだ。

年表は過去記事への別ルートになる

年表には、出来事を整理する役割だけでなく、過去のコンテンツへ辿るための役割も持たせた。

記事を公開順に遡るのではなく、「この時期には何があったのか」という出来事を起点にする。

同じ過去の記事でも、時系列の一覧から探す場合と、出来事の背景を知ったうえで読む場合では入り方が変わる。

コンテンツそのものを作り直さなくても、入口の設計を変えることで既存の記事をもう一度見つけてもらえる。

これは今回のサイトで特にやりたかったことの一つだった。

サイトの外まで含めて導線を設計する

このサイトは非営利の非公式ファンサイトとして作っている。

そのため、サイト内でユーザーを囲い込むことは目的にしていない。

サイトを見て興味を持った人が、本人の記事や活動へ進む。関連する企画があれば、そこへも繋ぐ。

ファンサイト自体を最終地点にするのではなく、既存のコンテンツを見つけるための新しい入口として位置付けた。

情報設計は「整理」だけではない

情報設計というと、情報を分類して、迷わず目的地へ到達できるようにする仕事として語られることが多い。

もちろん、それも重要だ。

ただ、Webサイトの目的によっては、最短距離が正解とは限らない。

今回のファンサイトでは、「必要な情報をすぐ見つける」だけではなく、「気になるものを辿っていたら、別の発見に出会う」ことも重視した。

だから図鑑があり、ギャラリーがあり、年表があり、関連コンテンツがある。

それぞれは別のページだが、中心にある役割は共通している。

過去に作られたコンテンツや出来事に、新しい入口を作ること。

情報を並べるだけではなく、その情報とどう出会うかまで設計する。

今回の制作で一番重視したのは、そこだった。

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Web制作、AI活用、ブランド設計を分断せず、一つの体験として設計しています。

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