Case Study

キャラクターIPは1枚絵で終わらせない — Web・LINE・グッズへ展開する設計

一枚のイラストから、Web・LINE・グッズへ。媒体が変わっても同じキャラクターであり続けるための設計。

ZERØのPC用壁紙。白い都市とキャラクターのビジュアル

キャラクターを一人作った。

立ち絵が完成して、表情も決まった。

それだけでも作品としては成立する。

でも、そのキャラクターをWebサイトに登場させ、SNSで使い、LINEスタンプにして、グッズへ展開しようとすると、必要なものは一気に変わる。

一枚の完成イラストを作ることと、キャラクターIPを設計することは同じではない。

ZERØとRAINという自分のキャラクターを展開する中で、強く意識するようになったのがこの違いだった。

キャラクターは「一枚の絵」ではなく「変換できる基準」

一枚のイラストだけなら、その絵の中で魅力的に見えればいい。

ポーズも、構図も、衣装も、表情も、その一枚に最適化できる。

しかし、そのまま別の媒体へ持っていけるとは限らない。

SNSアイコンなら、小さな円の中でも顔が認識できる必要がある。

バナーなら、文字やUIを置く余白が必要になる。

LINEスタンプなら、小さな画面でも表情と意味が一瞬で伝わらなければならない。

グッズなら、印刷範囲や商品の形によって構図が変わる。

必要なのは、完成した一枚を使い回すことではない。

媒体が変わっても同じキャラクターだと認識できる基準を持つこと。

そこで、立ち絵だけではなく、表情、顔、配色、衣装、性格、使ってよい表現などを、展開の基準になる素材として揃えていった。

固定するものと、変えていいものを分ける

キャラクター展開で難しいのは、一貫性と変化を両立することだと思う。

全部を固定すると、どのイラストも似た構図になる。

逆に自由に変えすぎると、別人になる。

だから、変えてはいけない特徴媒体や場面に合わせて変えていい部分を分けて考える。

顔立ち。髪型。基本的な配色。キャラクターの印象。

こうした識別に直結する部分は安定させる。

一方で、ポーズ。衣装の細部。画角。表情。演出。背景。

は用途に応じて変える。

目標は、毎回まったく同じ絵を作ることではない。

違う服を着て、違う場所にいて、違う表情をしていても、「これはZERØだ」「これはRAINだ」と分かること。

キャラクターIPの一貫性は、完全な固定ではなく、変化しても失われない特徴にある。

LINEスタンプでは「イラストの良さ」だけでは足りない

LINEスタンプを作ると、この違いは特に分かりやすかった。

キャラクターイラストとして綺麗でも、スタンプとして使いやすいとは限らない。

必要なのは、

  • 小さく表示されても表情が分かる
  • セリフが読みやすい
  • 感情が一瞬で伝わる
  • 日常会話で使える
  • 複数並んだときに役割が重複しない

といった別の条件だ。

さらにアニメーションになると、動けばいいわけでもない。

キャラクター全体を大きく動かすと、短い表示時間では見づらくなることがある。

逆に動きが小さすぎると、アニメーションにする意味が薄い。

そこで、人物そのものは比較的安定させながら、文字、効果、表情、リアクションへ動きを持たせる。

キャラクター性を保ちつつ、その媒体で使いやすい形へ変換する。

これは静止画を動画にする作業ではなく、LINEという媒体への再設計だった。

グッズでは「余白」がデザインになる

グッズも同じだ。

イラスト単体で見ると完成していても、商品へ配置すると印象が変わる。

アクリルスタンド。ステッカー。ポーチ。タンブラー。スマートフォン用の壁紙。

それぞれ形も、比率も、使われ方も違う。

たとえばタンブラーでは、単純にキャラクターを中央へ置くだけだと余白が広く見えることがあった。

逆に装飾を増やしすぎれば、商品としてはうるさくなる。

スマートフォン壁紙なら、時計、アイコン、ドックなど、OS側のUIも構図の一部として考える必要がある。

つまり、元絵を商品へ貼るのではない。

商品そのものをキャンバスとして、もう一度デザインする。

ここでもキャラクターは素材の一つになる。

Webではキャラクターに役割を持たせる

Webサイトへキャラクターを出す場合も、ただページにイラストを置けばいいわけではない。

案内役なのか。世界観を伝える存在なのか。コンテンツそのものなのか。

役割によって、必要な見せ方が変わる。

キャラクターが強すぎれば、伝えたい情報より目立つ。

弱すぎれば、置いてある意味がない。

Webでは、キャラクター。文章。UI。余白。導線。を同じ画面の中で扱う。

そのため、「このキャラクターをどこに置くか」より、「この画面で何をしてもらうか」から考える方が設計しやすい。

AIで展開しやすくなったからこそ、基準が必要になる

生成AIによって、一つのキャラクターから多くのビジュアルを作ること自体は以前より簡単になった。

衣装を変える。表情を増やす。季節イベントを作る。商品用の構図を作る。

展開できる量は一気に増える。

その一方で、生成するたびに少しずつ顔や特徴が変われば、量を増やすほどキャラクターの輪郭が曖昧になる。

だから自分の制作では、まず基準となる素材を持つ。

既存素材で対応できるなら、それを使う。

新しい素材が必要なら、基準と照らして作る。

そして最終的には、人間が「同じキャラクターとして成立しているか」を見る。

AIで生成量を増やせることと、IPとして一貫していることは別の問題だ。

むしろ生成できる量が増えたからこそ、何を基準に採用するかが重要になる。

一つ作って、終わりにしない

キャラクターIPを設計するとき、自分が考えている流れは、Character → Identity → Expression → Social → LINE → Productというものに近い。

最初にキャラクターがいる。

そこから識別できる特徴を定め、表情やポーズへ広げ、SNSで使える素材にし、コミュニケーションツールへ変え、最後は商品として成立する形へ変換していく。

すべてを最初から作る必要はない。

ただ、次へ展開するときに毎回ゼロからキャラクターを作り直さなくていい状態にはしておきたい。

一枚の完成イラストを作ることではなく、キャラクターが違う媒体へ移動しても、そのキャラクターであり続けられる仕組みを作ること。

自分がCharacter IP Designとして扱いたいのは、そこまで含めた設計だ。

STUDIO

構想を、形にする。

Web制作、AI活用、ブランド設計を分断せず、一つの体験として設計しています。

サービスを見る
← Insights一覧へ